トロントスタディープログラム卒業セレモニー

2025年1月26日、1年間通ったトロントスタディープログラムにおいて卒業試験も終え卒業証書をいただくことができました。

驚くほど莫大な情報量であり、ハイスペックなパソコンくらいの能力がなければ叩き込むことはできません。
が、しかしこれが世界のレベルであり日本の大学では全く教えられていないことばかりでした。

日本のセミナーは方法は教えられても ”なぜそうするのか?” という事は教えられていないような気がします。
特に歯内療法のセミナーに参加すると、受講生が「どこのシステムを使っているのか?」と講師の先生に質問している光景をよく目にしました。

しかしそんなことはどうでも良いことであり、
ゴールが見えていればここはこうしないといけない。
こうするためにはどんな器具が必要か?
そのためには何を理解しないといけないのか?
という様なことを沢山学ぶことができました。

トロントスタディープログラムでは、世界で活躍されている先生方の話が聞けるだけでも光栄なことであり、是非これらの知識を一人でも多くの先生方に伝えることで、残る可能性のある歯を抜歯されている今の現状をどうにかし、1本でも多くの歯を救う事が出来ればと思ております。

でもどのくらいの時間使えるの?と言った質問が出てきます。
1日でも長くと言っても、費用をかけて治療したのにすぐにダメになったとなると患者さんは起こりますよね?

トロント卒業セレモニーで非常に興味深いデータを示して頂いたDr.Shanon Patel教授のお話をさせて頂きます。

まず、天然歯であってもインプラントであっても現在の歯科の医療レベルでは一生使えるような治療法はないと言う事。
最新最良の歯内療法を行ってもいずれは抜歯になる可能性がある。
インプラントにしてもいずれは抜けてしまう可能性がある。
歯内療法とインプラントは競合するのではなく、補完しないといけない、と言う事である。

インプラントと歯内療法を受けた歯の長期生存の比較

インプラントと歯内治療を行った歯の生存率はほぼ同じである。

歯科医療のスパイラルと言う事で、すべての始まりはむし歯になって歯を削る事である。
削った歯も必ず次の治療が待っているのである。
そのうち神経が無くなり失敗すると再治療、繰り返しているうちに最後は抜歯してインプラントと言った流れになってしまう。

歯科医療のスパイラル

平均寿命はどんどん伸びている。
若いうちに永久歯を削ってしまうと、早くに歯は喪失する。
当医院では、1日いや1年でも削るのを先送りしたいと思っている。

神経を取らないといけなくなった場合でも、バイタルパルプセラピー(神経を残す治療)を行い、次の治療への介入を少しでも遅らせることで最後はインプラントになったとしても、何度もやり直すことなく最後まで口の中で機能すれば成功であると言う事であった。
治療介入の時期を遅らせるためには、予防への意識改革が必要ですね。

根管治療した歯を抜歯する理由

根管治療後の歯の生存率は5年で91%であり、一般歯科医が行った治療と専門医が行った治療では10%ほどの違いが出ている。
またまた非常に興味深い研究のデータであるが、抜歯に至る原因は何か?
やはり歯根破折が一番である。

しかしながら根管治療が原因で抜歯されるケースは2%と非常に少ない。
このことから歯内治療は出来ても、修復可能かどうかの評価が適切にされていないことにより抜歯に至ると言う事である。

となるとむし歯で大きく歯が無くなっている様な歯を残しても長くは持たない。
と言う結論にはなるのだが、抜歯宣告されて当医院に来院される方は殆どがこの状態である。

よってこの様なデータを見てもらいどうしたいかを十分に話し合わないといけない。

トロント大学認定の歯内療法専門医として益々精進し、治療の提供ができればと思っております。