”歯を抜く”と言う事に対し、どのようなことを考えないといけないのか。
まず、日本は現在高齢者人口の割合が世界で最高である。
その中で平均寿命と健康寿命について考えると、男女ともに10年は何らかの障害が出ているという状況になっている。
そして、施設での生活を余儀なくされることとなる。
体調が悪くなると、まず歯ブラシができなくなる。
患者さんの定期健診でお口の中を拝見すると、外見に変化がなくても口の中は状況が一変している方が多くいらっしゃる。
聞くと、認知症を患っていたり、本人はいつも通りに歯ブラシをされているつもりでも思うように手が動かなくなったりと、状況が変わっていることがある。
そうなるともう、イタチごっこの始まりである。
治療しても治療しても、次から次へと虫歯が出来、最後には抜歯もしくは施設に入居し、歯が無くなっていく。
何が言いたいかと言うと、どうしても健康で一生を終えられる方は多くない。
歯ブラシができなくなると、どんな治療をしてもダメになってしまうのである。
介護の現場では、介護者が口腔ケアを行わなければいけなくなりますが、介護が必要になった患者さんのお口の清潔を保つことは難しいとされています。
実際に介護現場で働く職員さんでも患者さんのお口の中の健康を保つことは困難なことではないでしょうか。
ようやく抜歯の話ですが、歯を抜いた後は何らかの形で新たに歯を入れなければいけません。
その際、”ブリッジ” か ”義歯” か ”インプラント” か、と言う事に関しては、色々なところで調べることができますので省略しますが、
インプラントと天然歯の最も大きな違いは、歯根膜と言う組織があるかないかです。
歯根膜はセンサーのような役割を持ち、物を嚙むことで脳に刺激を与えているのです。
歯と歯を嚙み合わせた時の刺激が歯根膜から脳に伝わり脳を活性化させるのです。
このことから認知症についても深くかかわっていることが分かってきています。
よく患者さんから言われるのは、「年を重ねると食べることしか楽しみがないのに、歯が痛くて食べられない」と言う事。
先日来院された方は施設に入居し、それまでは当院で治療して大事に残してあった歯を抜かれて何も食べられないと言う事で帰ってこられました。
しかしもう歯が無くなってしまっていたために、総入れ歯を作ることしかできませんでした。
ただその入れ歯も合わず3回作り直しました。
1本の歯があるかないかでこんなに変わるのです。
患者さんの楽しみは食べることなのです。
食べるためには歯が必要です。
インプラントもできますが、100歳を超えた患者さんに果たして出来るのでしょうか。
骨があれば年齢に関係なくインプラントは可能ですが、施設に入居され口腔ケアを介護者の方にお願いしないといけない事などを考えると、インプラントの適応ではなくなりますよね。
さて、インプラント VS 天然歯についてどちらがいいのか?
もちろん、天然歯であることは、言うまでもない。
インプラントに力を入れている先生は、インプラントと答えるかもしれない。
しかし、歯の構造上、神経や歯根膜の役割を知っていれば、どれだけの違いがあるかは一目瞭然である。
インプラントがよくないと言っているのではない。
歯を失ってしまった場合の最良の方法はインプラントである。
私は卒業後に大学病院にて勉強させて頂きましたが、その頃まだ香川の大学病院ではインプラント反対派の先生が多く、盛んにインプラントを行われている大阪へインプラントを学ぶために就職しました。
香川に帰ってからすぐはまだまだ今の歯内治療と同様、インプラントについて理解されている患者さんが大変少なく、需要も少なかったように思います。
歯内治療も今後インプラントのようにメジャーな治療になるかはわかりません。
なぜならアメリカでは歯科医師の中でもランクがあり、歯内療法専門医は歯科医師免許取得後さらに大学受験をし、2.3年間の専門医プログラムを受験し、合格しなければなりません。
歯内療法専門医は歯科医師の中でも最も難しく、地位が高いのです。
と言う事は、歯内療法は知識や技術が最も必要な治療と言う事です。
抜歯についてお話ししましたが、今現在は
インプラントは非常に有効な治療であるが、天然歯と比べると雲泥の差がある
と言う事をお分かりいただきたいと思います。
当院では、抜歯をせずに少しでも長くご自身の歯を大切にされたい患者様へ、最新のエビデンスに基づいた歯内治療『米国式根管治療』を行っています。