痛みについて Part2

歯科を受診される患者さんの中に慢性疼痛 (神経障害性疼痛) という病気があります。

歯が痛いと言われると大体の歯科医は歯に異常がなくても何とかしたいという思いがあるので神経を取る様な処置を行なってしまう。
日本の大学ではその様なことは教育されていないのでまず痛みのメカニズムも解っていない。
歯が痛い=神経を取ればどうにかなるという事になって しまうのである。


それでは神経障害性疼痛とは、分かりやすくお話しすると神経の働き方の誤作動で起こる痛みである。


虫歯があればそこに炎症があり痛みがでているのがわかるが、虫歯も何もない歯が痛いと言う場合には診断に時間をかけて色んな情報を患者さんに話して頂かないと正確な診断ができない。
仕事や家庭環境の変化まで話を掘り下げて聞かなければならない。
色んな話をしてもらうことでようやく診断が得られる。


虫歯も何もない場合非歯原性の痛みの診断となる。
我々歯科医が行ってはいけないのが正確な診断をせず不可逆性の処置をしてしまう事である。
非歯原性(歯には原因がない歯痛)の痛みに対する治療は我々歯科医では行えない。
国際疼痛学会が推奨する薬は歯科医では処方できないのである。


但し患者さんは長期間痛みを感じられており、1日も早く改善して頂きたい。
私も腰にヘルニアが あり数年に一度急性化し動けなくなる。
一度急性化すると何週間か? 何ヶ月か? 痛み止めを服用しても効かない痛みが続く。
それが続くと何もかもがポジティブに考えられなくなる。 不安しかなくなるのである。

しかし、人間には元々下行疼痛抑制システムというものが備わっており脳に痛みが伝わると痛みを抑制する機能が働くのです。
しかしながら不安になるとこのシステムにも障害が起こり痛みが取れなくなってしまうのです。


神経障害性疼痛は非常に長い期間痛みを感じて生活しないといけない。
仕事も日常生活も普通に 送れなくなってしまうのである。

最悪なのは3ヶ月を越えて痛みが続くと脳内の記憶の中に痛みが残り改善しなくなってくるのである。
薬物の効果を表す指標としてNNTというのが用いられる。
これは1人の患者に50%以上の痛みの減少を得るのに何人の患者にその薬物を投与すれば良いかを示した指標である。
50%の痛みの減少であって100%痛みが消えることは非常に難しいということである。


慢性疼痛の患者さんに我々歯科医ができることは少しでも早く診断し専門家へ紹介することくらいしかできません。


慢性疼痛を抱える患者さんは回復するためにはまず痛みについて語ること、 Drは聞くことで痛みの軽減が始まるのである。
我々歯科医としてできるのは、心理学的の痛みを理解することが最も重要であるとされている。
もし長期間歯に痛みを感じられている方がいれば歯が原因ではない可能性もあります。

そういう方がいらっしゃれば一度ご相談ください。