論文から、非常に面白いデータを発見

今回のお話は、根管治療をされた歯で抜歯に至った歯の抜歯原因を調べた論文である。

この論文の中で、根管治療が原因で抜歯に至るケースは思ったほど多くはなかった。

ではなぜ抜歯に至ったのか?

面白いことに、かぶせ物が悪くて抜歯に至るケースが圧倒的に多かった。
簡単に言うと根管治療が原因ではなく、被せ物の適合が悪く、その部分から虫歯になったりバイ菌が入ってしまって抜歯に至るケースが非常に多い。

じゃぁ根管治療は適当でいいんじゃないか?
そんな事はあり得ないが、成功率及び予後を考えるには被せ物が非常に大事である。

論文の中で最も面白いエビデンスベースの結果がある。
根管治療後にどのような補綴(被せ物や詰め物)にすれば最も長期に使えるのか?というものである。
逆に言えば、どのような材料が一番予後が悪く使ってはいけない材料なのか?

これに関して、最も予後が悪かったのは「レジン」という詰め物であった。

レジンという材料はボンドで歯にひっつける樹脂である。
この材料は材料の進歩により歯質に接着しどんな治療にも使えると言う事で世界中で使用されている。
しかし肝心のボンドについての研究結果では、昔からある材料より接着力の高い材料は出ていない。

もっと面白いのは、根管治療後に何も被せたり詰めたりしなかった歯よりも、レジン充填をした歯の方が抜歯に至るケースが多かった。
この理由までは記載がなかったが、非常に面白いデータであり、レジンが根管治療後の歯には使えない材料であるという結果である。

これは、レジンという材料は固める時に光を照射して重合させる。
この重合時の収縮が原因ではないか?
日本で市販されているレジンの収縮率について、どのレジンが最も少ないのかと言う事も調べてみたがあまり大きな差は出ていない。
これはC-factorと呼ばれこの値を少なくするような充填のやり方もあるが、決して0にはできないことによる結果ではないだろうか?
重合収縮時に接着していない部分があり、その部分からばい菌が侵入するのであろう。

どこに歯が残っていてどのような場合にはどんな被せ物がベストなのか?
残存歯質の状況により土台はどんな材料の土台を入れるべきなのか?

すべてデータにより証明されている。

非常にありがたい研究である。
要するに、根管治療をした歯は、治療から被せ物まですべてが100点の治療でなければならないと言う事である。


ここまでの治療を行って破折してしまったときには非常に悲しい。
破折はいつ起こるか分からない。
マウスピースの使用は必須である。